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海の中で息をして

近代文学、現代文学、海外文学の感想を書くブログ

川端康成『古都』

移りゆく季節の中で、木々の姿も京都の色も人の心も変化していく。由緒ある祭は晴れやかに京都の街を照らす。灯りと共に心も揺らめいていた。

 

主人公の千重子は捨て子であった。裕福な家庭に拾われ、あまり苦労することなく暮らしていた。祇園祭。千重子は出会ってしまう。生き別れた双子の片割れに。そこには、身分の差があった。

 

着物や帯の柄。身近ではないそれらは、この本の世界では中心近くに存在する。京都の伝統的な祭が私達を京都へと誘う。祭の説明が詳しく書かれていて、何も知らなくても祭の雰囲気漂う人混みを歩くことが出来る。

 

ゆらゆらと揺らめく文体で、身体の透明度が増したような地に足付かない感覚だった。花の色も美しかったが、杉林の緑色と茶色が清々しく力強くかった。

 

美は刹那の中にあった。

 

 

 

古都 (新潮文庫)

古都 (新潮文庫)