本を紹介し、近代文学・現代文学・海外文学の感想を書きます。雑感も書きます。

海の中で息をして

近代文学、現代文学、海外文学の感想を書くブログ

カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』

カズオ・イシグロ氏は2017年にノーベル賞を受賞した。原題が「Never let me go」で、なんとなく面白そうだから入門として買った。ノーベル賞受賞者だけある、そう感じる作品だった。 この作品は是非とも前知識、ネタバレなしで読んで欲しい。映画の予告編、…

山崎ナオコーラ『可愛い世の中』

付き合うことは、自分と相手が違う人ってことを知ることだ、みたいな文を読んで、なるほどなぁと思ったことがある。自分が好きなことが相手も好きとは限らない。それに気づくまで、ちょっと時間がかかる。 山崎ナオコーラさんの作品で、表紙がシンプルで、タ…

村上春樹『風の歌を聴け』

村上春樹氏の処女作。そう聞いたら、知らずに読んだ人は納得するだろう。「確かにこれは処女作だ。」 本屋さんに立ち寄り、立ち止まってスマホで検索する。村上春樹 おすすめ。手軽に読めて、かつ確固として文学な小説を読みたい。黄色地に赤色のペンで書か…

村上龍『イン ザ・ミソスープ』

村上龍の作品の中で、過去に「コインロッカー・ベイビーズ」と「限りなく透明に近いブルー」を読んだことがあった。突拍子の無さが現実と絡み合う心地よさ。グロテスクな表現と衝撃的なセックスが印象深かった。現実感の無いぶっ飛んだセックスを読みたい気…

モリエール『人間ぎらい』

戯曲には、喜劇と悲劇があるらしい。一般的には『人間ぎらい」は喜劇らしい。あとがきによると、喜劇を悲劇にまで掘り下げた作品らしい。 主人公のアルセストは、正義を貫く者である。事の正しさ、自分の気持ちを重んじ、他人の気持ちを顧みない。自分の気持…

スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』村上春樹訳

村上春樹『ノルウェイの森』を読んだ時から、いつか読もうと思っていた。だから、「一ページとしてつまらないページはなかった。」そう刷り込まれて読んだ感想に過ぎない。 全てのページを素晴らしく感じる人は、全てのページを一度読んだ人だ。景色の意味、…

アントニオ・タブッキ『遠い水平線』

スピノザは、イベリア系のユダヤ人で、目のなかに、遠い水平線をもっていた。われわれが動くと、水平線も動く。だから、水平線とは、幾何学的な表現だ。私の登場人物も、なにかの魔法で、水平線に到達してくれたことをこころから祈っている。彼もまた、遠い…

川端康成『古都』

移りゆく季節の中で、木々の姿も京都の色も人の心も変化していく。由緒ある祭は晴れやかに京都の街を照らす。灯りと共に心も揺らめいていた。 主人公の千重子は捨て子であった。裕福な家庭に拾われ、あまり苦労することなく暮らしていた。祇園祭。千重子は出…

住野よる『君の膵臓をたべたい』

作品名を見たときから気になっていた。あらすじを読んでみた。膵臓、病気、君の膵臓をたべたい。読まなくてもいいかな、と思った。文庫版が発売され、買った、読んだ。読まないと決めた時の僕は、もう10ページ読んで出直してきた方がいい。 「肝臓が悪かった…

夏目漱石『それから』

主人公の代助は親から金を貰い働かずに生活をしていた。知識人であった。いつも本を読み、友の翻訳の頼みがあれば相談に乗った。金も時間も自由もあった。意思はなかった。 あらすじを意識せず本文へ入った。この作品は裏表紙、あらすじにある通りの「悲劇」…

M.A. アストゥリアス 『グアテマラ伝説集』

「ノーベル文学賞」と検索して、受賞者一覧を見てみる。そのうちから小説部門での受賞者を見ていく。数人をピックアップして作品を調べる。その内の一冊が『グアテマラ伝説集』だった。 内容はマヤ神話に基づいた伝説が、導入部のグアテマラと共に、ノーベル…