本を紹介し、近代文学・現代文学・海外文学の感想を書きます。雑感も書きます。

海の中で息をして

近代文学、現代文学、海外文学の感想を書くブログ

2017-01-01から1年間の記事一覧

アントニオ・タブッキ『遠い水平線』

スピノザは、イベリア系のユダヤ人で、目のなかに、遠い水平線をもっていた。われわれが動くと、水平線も動く。だから、水平線とは、幾何学的な表現だ。私の登場人物も、なにかの魔法で、水平線に到達してくれたことをこころから祈っている。彼もまた、遠い…

川端康成『古都』

移りゆく季節の中で、木々の姿も京都の色も人の心も変化していく。由緒ある祭は晴れやかに京都の街を照らす。灯りと共に心も揺らめいていた。 主人公の千重子は捨て子であった。裕福な家庭に拾われ、あまり苦労することなく暮らしていた。祇園祭。千重子は出…

住野よる『君の膵臓をたべたい』

作品名を見たときから気になっていた。あらすじを読んでみた。膵臓、病気、君の膵臓をたべたい。読まなくてもいいかな、と思った。文庫版が発売され、買った、読んだ。読まないと決めた時の僕は、もう10ページ読んで出直してきた方がいい。 「肝臓が悪かった…

夏目漱石『それから』

主人公の代助は親から金を貰い働かずに生活をしていた。知識人であった。いつも本を読み、友の翻訳の頼みがあれば相談に乗った。金も時間も自由もあった。意思はなかった。 あらすじを意識せず本文へ入った。この作品は裏表紙、あらすじにある通りの「悲劇」…

ふかわりょうさんの新聞記事を読んで

ツイッターで見かけた、ふかわりょうさんの新聞記事「いいねなんて、いらない。」、カメラを置いていく理由として 撮ることに気を取られて、旅を楽しめなくなっていることに気付いたから。 (「いいねなんて、いらない」2017.8.19 東京新聞より) 私もそう思っ…

M.A. アストゥリアス 『グアテマラ伝説集』

「ノーベル文学賞」と検索して、受賞者一覧を見てみる。そのうちから小説部門での受賞者を見ていく。数人をピックアップして作品を調べる。その内の一冊が『グアテマラ伝説集』だった。 内容はマヤ神話に基づいた伝説が、導入部のグアテマラと共に、ノーベル…